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タイで発展した仏教の護符刺青の儀式が開催された
配信日時:2015年3月9日 17時00分 [ ID:1648]

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ハヌマーン(サルの神)などが入り込み、暴れたり踊り出す。タイ人は護符刺青に魂が宿ると信じているが、この儀式でこういった現象が起こるから信じているのか、信じているからこの現象が起こるのかはわからない。

 2015年3月7日、タイの仏教に基づいて行われる護符刺青(いれずみ)「サックヤン」で有名な寺院「ワット・バーンプラ」で、僧侶への感謝の儀式が開催された。

 この儀式はタイ国内にあるどの寺院でも年に1回は開催されるごく普通のものだが、バンコクからおよそ50キロほどのパトゥムタニ県にあるこの寺院の儀式が有名なのは、すでに他界されているサックヤンの師・ルアンポープン僧を崇拝する信者たちが、各々体に彫っているサックヤンの図柄の神が心に入り込み暴れ出すことから「奇祭的」な位置づけになったからだ。

 早朝7時過ぎの到着だった。儀式は9時スタートだが、すでに2000人を超える信者がルアンポープンをかたどった仏像前に座っていた。

 そして、時折、座って待機している群衆の中から叫び声が聞こえ、奇声を発しながら仏像に突進していた。これはタイのサックヤンで好まれる図柄のトラやハヌマーン(孫悟空のモデルとされるサルの神)、老師(もしくは仙人)が入り込んでいるのだという。彼らは暴れている間は意識はないとされる。

 大の大人が全速力で駆けてくるのでかなり危険だ。仏像前には救急車の団体や兵士などが待機し、彼らを受け止めなだめていた。耳を引っ張り、体を抱えて足を浮かせると入り込んだ「なにか」が抜けるのだという。

 時折、なにかの拍子に数十名が同時に取り憑かれ、全速力で走ってくるシーンもあった。迫力というよりも恐怖を感じた。

 タイの仏教は、インド方面から伝来する以前にあった精霊信仰と強く結びついている。仏像にはヒンズー教の神そのままのものもあるなど、日本の仏教とはまったく違う。サックヤンも刺青だからと否定的に見られることもあまりなく、今回の儀式のように神秘的なのか、狂気的なのかわからないことも起こる。これもまたタイのひとつの姿なのだと感じた。

【執筆:高田胤臣】

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