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【ミャンマー】伝統ラップ劇団員の一部被告に異例の無罪 国軍側告訴退ける 有罪の団員は合計3年の懲役
配信日時:2020年2月18日 17時15分 [ ID:6152]

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無罪判決を受けたネインジャンソーさん(ヤンゴン、撮影:北角裕樹)

 2020年2月17日、ミャンマーの伝統ラップであるタンジャの劇団「ピーコックジェネレーション」の公演で国軍を批判したとされる事件の公判が、最大都市ヤンゴンのボタタウン郡区裁判所であった。劇団員の男女7人が電気通信法66条d項(サイバー空間での名誉棄損)違反の罪に問われたもの。同裁判所は3人に懲役6月の有罪判決を言い渡したうえで、4人を無罪とした。

 国軍側が告訴した事件で無罪判決が出るのは、ミャンマーの裁判では異例。電気通信法では、インターネットや交流サイト(SNS)などでの中傷や名誉棄損を広範に禁止している。無罪判決が出た4被告について同裁判所は、国軍を批判したとされる公演に参加したとしても、フェイスブックでシェアするなど動画の拡散には関与していないとして、同法違反に当たらないと判断。一方で動画を拡散させた3人に有罪を言い渡した。

 判決言い渡し後、無罪となったゾーリントさんは「無罪は全く正しい判決だ」と逮捕の不当性を主張。同じく無罪となったネインジャンソーさんは「自分が無罪になったのは不幸中の幸いだが、懲役刑を受けた仲間もいるのでとても悲しい」と話した。

 同劇団のメンバーらは2019年4月の水祭り期間などに行ったタンジャの公演で、国軍を中傷する内容があったとして逮捕された。別の公演などについて8つの事件で告訴されており、判決がでたのは今回で4つ目。ある男性被告は4つの事件ですべて有罪となり、計3年の懲役の判決を受けている。また、今回無罪となった被告の中には、すでに別の事件で有罪となっている人もいる。これまでの判決では、今回の電気通信法違反で無罪になったのと同様のケースでも有罪判決が下されており、裁判所の判断が割れている。被告の一部は今後、エーヤワディ管区に身柄を移され、現地の裁判所で別の事件の審理が始まる予定だ。

 ミャンマーには、電気通信法のほか、国軍への批判を実質的に禁止する刑法の規定など言論の自由を制限する法律が多数存在し、民主活動家の弾圧に使われてきた歴史がある。2016年にアウンサンスーチー国家顧問が実質的に率いる国民民主連盟(NLD)政権となってからも、映画監督やジャーナリストが逮捕され、有罪判決を受けている。国軍や当局の告訴によって逮捕されるケースが多く、こうした事件で無罪判決が出ることはまれだった。

【取材・執筆:リンニャントゥン・北角裕樹】

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