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「下街ろまん」バンコクでも上映会! -笑顔は人や街とのつながりから
配信日時:2019年12月31日 9時15分 [ ID:6052]

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「地域」「コミュニケーション」をテーマにした『下街ろまん』

 2019年12月31日、物質的に豊かになった国は精神疾患に悩む人が多いとされることがあるが、豊かさよりもストレス度のほうが相関性が高いというデータがある。また、うつ病をはじめ様々な精神疾患に対する認識の広まりが受診率を上げ、これまで不透明であった実態が見え始めている。経済格差を抱えながらここ近年急速な近代化を遂げているタイについても同様で、WHO South-East Asia Journal of Public Healthやタイ保健省メンタルヘルス局等でも、うつ病やメンタルヘルスに関する報告が増えている。

 先月、大の樹レストラン(バンコク・スクムビット トンロー)で、「地域」「コミュニケーション」「健康のためには薬より大切なものがある」をテーマにした『下街ろまん』上映会の夕べが行われた。

 タイは日本人集住都市として、旅行者や出張など短期滞在者数も年々増加し続けている人気国。とくに首都バンコクは、仕事などで長期滞在する在留邦人数が最も多い。年間通じて気候が暖かく、開放的な雰囲気で人気である。その一方で、長期滞在者の中には日本とは言葉や文化が異なる環境に戸惑いや孤独感を覚え、日々の葛藤の中で身体や精神的に不調をきたすケースも多い。さらには異文化を持つタイ人と、また限られた環境で日本人同士の人間関係に悩みを持つ人も少なくない。
 
 『下街ろまん』は、うつ病にかかった一人の青年が、人々や風物など街が持つ力によって1年後には元気を取り戻していくという短編映画。人々の繋がりと健康を高める地域協働プロジェクト“谷根千まちばの健康プロジェクト(まちけん)”の活動として、家庭医でもあり東京大学大学院講師でもある孫大輔監督がメガホンを取った。孫監督は、「多様性のある緩いつながりの中で生まれる、対等な関係による対話や繋がりは、人を健康にしてくれる。」と話す。日本ではこの映画の上映会を通じて孫監督と語り合うみんくるカフェが、東京から大分や福井など各地に広がり、同テーマに対する人々の関心の高さをうかがわせている。

 そのような中、バンコクでも飯田光孝氏を代表に上映会が企画・主催され、長期・短期滞在合わせて26名の日本人が参加。孫監督は東京からビデオチャットで生出演、孫監督と東京で共に活動を行う密山要用医師(東京大大学院・家庭医)は会場に駆け付け会を盛り上げた。映画上映後の懇談(みんくるカフェ)では、「タイは屋台やバイクタクシーも多いので、道を歩いていても常に誰かと接点があるような気持ちになる。」「疲れるとタイ古式マッサージで癒されている。」「タイ人にはうつ病が比較的少ないと聞く。気候柄開放的な雰囲気が良いのか。敬虔な仏教徒が多く、祈りやお参りを日常的に行っているからか。あまり一人行動をしたがらないからか。」などタイならではの観点からや、「映画のようにちょっとした会話からでも効果があるなら、今後身近での会話にも心がけを改めようと思った。」「異なるものを尊重できず、対立になってしまうと物凄いストレスが生まれる。そして精神的にも耐性が弱まる。」「1つのものから、こんなにもいろいろな感じ方があるのだと興味深かった」など自身を振り返るものまで様々な感想が活発に飛び交った。企画側は「想定を超える盛り上がりがあり、バンコクでもとても大切なテーマだと改めて感じた。身近な環境を見つめなおす有意義な夕べになった。」と開催の印象を話した。

【編集:宮原由佳(MPH)】

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