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ミャンマー政府とカレン族勢力、運動家逮捕で関係泥沼 全土停戦の交渉に影響も
配信日時:2019年10月5日 12時30分 [ ID:5920]

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抗議活動にはカレン族以外の少数民族も参加(ヤンゴン、撮影:北角裕樹)

 2019年10月5日、すべての少数民族武装勢力との内戦終結を目指すミャンマー政府と、すでに停戦に応じているカレン族勢力との関係が悪化している。ミャンマー当局がカレン族の民族運動家を逮捕したことがきっかけで抗議運動が起こり、その抗議に対してさらに当局が法的措置をとる泥沼の展開となっている。カレン族の中心的な武装勢力「カレン民族同盟(KNU)」は全土停戦協定に署名しているが、停戦した武装勢力の不満が高まれば、カチン族系やワ族系など未署名の武装勢力との交渉に支障が出かねない状況だ。

 カレン族の女性運動家のオウンラ氏ら3人は、8月にヤンゴン市内の公園で、カレン民族の内戦犠牲者を追悼する集会を開いたところ、当局の許可がなかったとして逮捕。10月2日に有罪判決を受けた。この間、カレン族側は公判が開かれる日には数百人の支援者らがヤンゴン中心部の裁判所に詰めかけて抗議運動を展開。これに対し当局は抗議活動を主導した別の市民団体メンバーら3人を立件する刑事手続き進めると通告し、カレン族側のさらなる反発を生んでいる。抗議に参加したKNU幹部は「こんな弾圧が続いていたのでは、停戦交渉に影響する。警察だけではなく政権に責任がある」と怒りをあらわにした。

 ミャンマーでは、1948年の独立直後から内戦が勃発。カレン族やカチン族、ワ族などの武装勢力がそれぞれ支配地域を確立して、断続的に戦闘を続けてきた。2011年の民政移管でテインセイン政権が誕生すると、武装勢力との交渉が進展。約20の武装勢力のうち、2015年にKNUなど8勢力が全土停戦協定に署名した。2016年にアウンサンスーチー国家顧問が実質的に率いるNLD政権が誕生して以降は新モン州党など2勢力が署名。しかしその後の交渉は難航し、政府側は2018年に一方的に戦闘を中止すると宣言したが、その後もカチン独立軍(KIA)など残りの武装勢力との交渉は停滞している。2019年9月にはシャン州の軍事技術学校など国軍関連施設が襲撃されて10人以上の死者が出るなど、緊迫した状況が続いている。

【取材/執筆:北角裕樹】

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