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復興と成長支える大動脈「物流」 システム改善に日本の力ーJICAカンボジア事務所
配信日時:2018年4月27日 9時15分 [ ID:4984]

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復興と成長支える大動脈「物流」 システム改善に日本の力

 2018年4月27日、JICAカンボジア事務所が先月発行したカンボジアだよりNo79に『イチからわかる ! JICAプロジェクト 復興と成長支える大動脈「物流」システム改善に日本の力』と題する記事が掲載された。

(記事) 復興と成長支える大動脈「物流」 システム改善に日本の力

●注目される物流政策

 順調な経済成長を遂げるカンボジアですが、ASEAN経済共同体のなかで近隣諸国との連結性を高め、ビジネス環境を向上させるためには、輸出入関係手続きや交通インフラなど「物流」の改善が必要と指摘されています。カンボジア政府が2015年に掲げた産業開発政策でも、電力の安定供給、高度人材の育成、シハヌークビル港の活用と並んで、物流改善が最重要課題として挙げられています。また、2016年には公共事業運輸省内にこれまでなかった「物流総局」が新設されました。

 「物流」はいま、国の政策の中心としてそれほど注目されているのです。

 これを踏まえて今年4月ごろまでに、カンボジア政府は初めてとなる国の包括的な物流マスタープランを策定します。JICAと世界銀行が支援しました。

 この物流マスタープランの策定に至るまでには、カンボジアの内戦後間もないころから公共事業運輸省への支援を続けた日本の力がありました。まだ破壊された道路の復旧工事が最優先課題だった1996年から、運輸政策アドバイザーとして7人のJICA長期専門家が同省へ派遣され、基幹となる道路ネットワークから港湾の整備まで、幅広く物流改善に取り組んできました。

●省庁横断の国家物流評議会が始動

 七代目の専門家で3月末に任期を終える久米秀俊さんによれば、今回のマスタープランは、2016年にJICAが独自に実施した「カンボジアの国際物流機能強化のための情報収集・確認調査」に基づいている部分が多くあります。

 この調査は、それまで信頼できる統計がほとんどなかったこの国の物流の姿を、ルート別の物流の量や特徴などから浮き彫りにし、コンテナ輸出入の約6割以上を占めるシハヌークビル港利用ルート、約3割を占めるプノンペン港・内陸水運利用ルートなどのハード面、ソフト面の課題を明らかにしました。そのうえで、省庁横断的な「国家物流評議会」の設立を提案し、これが現在進めている物流マスタープラン策定・推進の中心になります。

 マスタープランの策定に加え、久米さんたちはその中に位置づけ実現すべき「質の高い運輸インフラ整備や運輸行政改善」にも取り組んできました。たとえば南部経済回廊の一画を占めるシハヌークビル港の整備、幹線国道の整備や、ホーチミン・プノンペン間の高速道路整備事業準備調査の実施、メコン河を利用した内陸水運輸送の迅速化に向けた国境通航手続きの改善、港への鉄道アクセスの改善などです。

 また、運輸行政の改善として、船舶の出入港の手続きを電子化、国際標準化する港湾Electronic Data Interchange(EDI)システムの導入による輸出入の円滑化、迅速化も支援しています。

●育つ「物流人材」

 公共事業運輸省で働くなかで、久米さんは職員たちがあまり現場へ出ていなかったことに気づいたといいます。そこでプロジェクトの中で内陸水運や鉄道の状況を知るために実際に夜間の移動を視察したり、港湾で船舶の出入港の手続きを実際に見学したり、現場に出る機会をつくり、当事者たちの理解を深めました。「システムを作るだけでなく、人材を育てることにも力を注ぐのは、日本らしい援助のあり方だと思いました」と、久米さんは言います。

 経済成長の大動脈ともいえる物流システムの改善は、まだ緒に就いたばかりです。日本の専門家たちが育ててきた「物流人材」の活躍が期待されます。

 その第一歩として、帰国を3月末に控えた現在も、日本の無償資金協力による港湾EDIシステムの導入に向け、JICA調査団とカウンターパートの協議調整に走り回っています。

【編集:YA】

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