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【インド】高額紙幣の廃止で、GDP成長率を押し下げかーHSBC投信
配信日時:2016年11月22日 6時21分 [ ID:3938]

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 2016年11月21日、HSBC投信は、高額紙幣廃止の影響で、短期的には消費者の購買意欲の低下が懸念されており、その影響は自動車・二輪車など高額商品から一般消費財まで多岐に及び、今年10-12月期のGDP成長率を押し下げる可能性もあると伝えている。

 (HSBC投信レポート)「マーケットサマリー(株式・債券・為替市場)
10月は株式市場、債券市場ともに小幅な動き。インフレ率の低下と政策金利の引き下げがプラス要因となった一方、海外では米国の12月の利上げ観測の高まりがマイナスに働いた。通貨ルピーは対米ドルで弱含み。

 脱税や紙幣偽造の撲滅に向けて高額紙幣を廃止

 インド政府は11月8日、これまで高額紙幣として流通していた法定通貨の500ルピー札と1,000ルピー札の2種類を廃止すると発表した。代替として、新たに500ルピー、2,000ルピーの新札が段階的に発行される。

 2種類の旧紙幣は、今年末まで銀行などで換金が可能だが、換金額が一定額を超える場合には身分証明書の提示が必要となり、換金された紙幣は税務官らに精査される。

 今回の措置は、汚職および非公式経済(いわゆる地下経済)の撲滅を目的としている。

 高額紙幣廃止のインド経済への影響は少なくない。インドでは現金の流通量が対国内総生産(GDP)比12.1%に相当する。このうち今回廃止が決定された500ルピー札、1,000ルピー札が占める割合は87%に達する。

 このため、短期的には消費者の購買意欲の低下が懸念されており、その影響は自動車・二輪車など高額商品から一般消費財まで多岐に及び、ひいては今年10-12月期のGDP成長率を押し下げる可能性もある。

 モディ政権下で進展する各種改革

 インドでは、非公式経済がGDPの20%に及ぶと見られている。インド政府にとり、通貨偽造、汚職、脱税などが蔓延る非公式経済の撲滅、公式経済への移行促進は急務である。

 インド政府は、過去に実施されたタックス・アムネスティ(税務特赦)に加え、近く導入が見込まれる「物品サービス税(GST)」、高額現金取引における身分証提示義務など、ブラックマネー(不正資金)の撲滅や税徴収の強化に取り組んでいる。

 今回の高額紙幣廃止も不正資金の流用を一掃する一助となろう

 税務特赦:資産や所得を過去に申告してこなかった納税者が自主的に開示・申告を行うことで加算税の減免や刑事告
発の免除を得られる措置。

 GST:中央政府と各州が課す複雑な間接税を一本化する大規模税制改革。

 長期的にはプラス側面が勝ると見る

 高額紙幣の廃止は、短期的には、非公式経済の活動に打撃を与える一方、公式経済における消費者心理の悪化にも繋がる「荒治療」と言える。しかし中長期的には、汚職や脱税などインド経済が孕む問題を抜本的に解決する「ショック療法」になることが期待できる。

 汚職の撲滅は、ビジネス環境の改善に貢献するばかりでなく、非公式経済から公式経済への移行による納税対象範囲の拡大、ひいては税収増に繋がることも期待できる。これはインフラ投資のための財源拡大にもなる。一方、高額紙幣廃止は足元で金への需要を押し上げているが、銀行システムへの現金の預け入れと銀行利用の拡大は、中期的には金から金融資産へと需要をシフトさせることが見込まれる。

【編集:KD】

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