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【ラオス】定年を過ぎた自衛隊OBらがラオス人に「爆弾のこぎりカット法」を伝授
配信日時:2015年8月31日 17時00分 [ ID:2449]

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ラオスでの活動が長い中条宏氏(左)と、今年3月に着任した宇良一成氏。ふたりとも定年まで勤め上げ、ラオスの不発弾問題を知り立ち上がった。

 2015年8月31日、ラオス人民民主共和国の深刻な社会問題を紹介したい。

 ラオスは1964年~1973年の間、共産主義化の波と隣国ベトナムの戦争におけるホーチミン・ルートのラオス国内通過のため、米軍からおよそ200万トン以上の爆弾が北部と南部に投下された。

 現在でも国土の3分の1以上が不発弾に汚染されたままで、現在の処理スピードではラオスが安全化されるまでに、あと200年はかかると言われている。

 事実、現在でも国民1人当たりの被爆撃量が世界で最も多く、不発弾による死傷者も1964年~2008年の間で5万人にのぼる。政府などの啓蒙活動で2014年の死者数は45人、負傷者29人とだいぶ減ってきているが、ラオス全体の交通事故死者数が1000人前後であることを踏まえると、不発弾被害者はまだまだ多い。

 2014年の死者数45人のうち12人は子どもだった。子爆弾はカラフルで子どもの興味を惹きやすい。そのためか、子どもの被害者のすべてが男児であった。大人の死者も男性が多い。畑仕事などで外に出ることが多く、開墾でクワを振り下ろした瞬間に不発弾に当たり爆発するのだ。

 ラオス政府は1996年にUXOラオという不発弾処理機関を発足し、処理を続けている。首相府の地方開発・貧困削減局に属していることもからもわかるように、ラオス政府も不発弾問題が深刻であるという危機感はある。しかし、2015年の予算は出ておらず、外国の団体やラオスの民間会社に不発弾処理を任せている状態だ。

 そんな中に日本の認定NPO法人「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」もある。JMASは2002年にカンボジアで地雷処理活動を始め、2006年からラオスで不発弾処理を進めている団体である。

 JMASは欧米の団体とスタンスが違い、ラオスの各地でプロジェクトを組み、UXOラオの職員育成を目的として活動していた。しかし、2014年10月に現場での直接的な活動を終了させ、翌月からはビエンチャン郊外にあるUXOラオの教育施設で、職員の教育や施設建設を行っている。

 現在その施設でふたりの陸上自衛隊OBが教育を行っている。中条宏氏(70歳)と宇良一成氏(61歳)だ。

 ふたりが教えているのは世界でも自衛隊だけでしか行っていない「爆弾のこぎりカット法」である。民家が近いなど、現場で不発弾の爆破処理できない場合にのこぎりで切ってしまい、安全化を図る手法だ。

 実は爆弾は信管と3種類の爆薬を合わせることで初めて大爆発を起こす。特に信管がなければ爆発はまず起こらない。なので、信管を作動しないように切ってしまえば安全なのである。

 日本の技術が多くの人の命を救うことを信じている中条氏と宇良氏が、陸上自衛隊でもいまだ無事故だという爆弾処理方法を炎天下の中、厳しい目と優しい笑みでUXOラオ職員に指導していた。

取材協力 : 日本地雷処理を支援する会 http://jmas-ngo.jp/

【執筆:高田胤臣】

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