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【タイ】「世界で貢献するJICAシニア海外ボランティア」inチェンマイ
配信日時:2015年2月1日 11時00分 [ ID:1470]

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チェンマイに赴任して1年、JICAシニア海外ボランティアの渡邊 邦夫さんに「チェンマイの宗教と文化に関する研修」について執筆してもらった。写真は、シーク教寺院で礼拝。

 2015年2月1日、シリーズ「世界で貢献するJICAシニア海外ボランティア」を定期的にお届けする。第一回は、渡邊 邦夫さんに「チェンマイの宗教と文化に関する研修」について執筆してもらった。

 みなさんこんにちは。チェンマイ大学医療技術学部作業療法学科に赴任して1年が過ぎました。タイはタイ族が80%以上、仏教徒が90%以上ですが、様々な民族が住み、いろいろな宗教があります。チェンマイでは旧市街の東側を流れるピン川沿いのエリアに仏教以外の宗教施設やタイ族以外のコミュニティが点在しています。今回は、昨年11月に医療技術学部が行った「宗教と文化に関する研修」の様子をお伝えします。参加者は女子学生19名、男子は1名だけ、10名がイスラム教徒の学生でした。

 1.シーク教の礼拝と盛りだくさんの食事
8時過ぎ、ピン川の東側にあるシーク教の寺院を見学。シーク教徒の男性はターバンを巻き、髭を生やしているというイメージですが、チェンマイではあまり多くありません。ただし礼拝の時は髪の毛を隠す布を巻きます。1時間余りの礼拝のあと、宗教や身分を問わずみんなで楽しく食事をします。私は学生たちと一緒にチャパティ、豆のカレー、タイ料理、甘くて香り高いチャイをいただきました。

 2.教会で仏教とイスラム教などの説明
次にプロテスタントの教会に移動し、キリスト教、仏教、イスラム教の説明を受けました。少しびっくりしたのは、仏教のお坊さんや敬虔なイスラム教徒の方が十字架を背にする演壇で何の違和感もなく淡々と説明をしてくれたことです。続いてチェンマイの景観保護活動をしている中年の女性のお話を聞きました。チェンマイでは観光地化、都市化が進み、「ランナー文化」と呼ばれる北タイの景観、生活文化、そして貴重な遺跡が失われているそうです。それから「ゲート・ガラム」というお寺の博物館を見学。昔ながらの北タイの生活用具に交じって、麻薬の重さを計る道具、チェンマイ大学の設立運動当時の古いポスターなどがありました。

 3.モスクで礼拝
昼過ぎ、イスラム教のモスクへ。手足や口を清め、午後1時10分、コーランの響く中、メッカの方を向いて礼拝が始まりました。道をはさんだ向かい側はイスラム教徒の学校とクリニックがあり、こじんまりしたイスラムのコミュニティになっています。

 4.チェンマイの中国系イスラム
学校の食堂で遅めの昼食。車座になり、北タイ名物の「カントーク料理」をいただきながら、中国系イスラムの社会学の先生からお話を聞きました。20世紀の初めころ、チェンマイには「回族」と呼ばれる中国系イスラムがタイに移住し、ピン川を活用した海運業や商業を行っていたそうです。その後、お酒も飲まず勤勉なイスラム教徒の本領を発揮して子供たちの教育に力を注ぎ、第二世代、第三世代は医師などの専門職、教員、研究者、政府職員になった人が多いそうです。さらに近年は貿易や金融などの仕事でインド、中近東に進出しているとのこと。なんとなく「移住」したら、そこに「定住」するというイメージを持っていましたが、そこから「再移住」して世界に広がるたくましさを感じました。

 5.多様性・寛容性そして共存
学生に聞いたところ、タイでは高校生の時から本格的に宗教や文化の多様性について学び、他の民族、宗教の学生とも気軽に友達になり、それぞれの習慣に合わせて食事をし、遊びに行くそうです。タイの若者たちの多くは、普段の生活や友人関係を通じて宗教や文化の多様性を体験的に理解し、柔軟な対応力を身につけ、自分のアイデンティティを磨いていくのでしょう。近年、極端な宗教の理解に基づく破壊的な行為や他の民族に対する憎しみをあらわにする言動が世界の大きな脅威になっています。今回の研修を通じて、チェンマイではそれぞれ宗教の指導者や信者の方々が他の宗教についてとても寛容で、共存していくことを大切にしているように感じました。

【執筆/撮影:JICAシニア海外ボランティア 渡邊 邦夫】

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