TODAY 2025年12月7日
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日米レアアース共同開発:経済成長の「切り札」となるか(中)
配信日時:2025年12月6日 8時00分 [ ID:10683]
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サプライチェーンの再構築と「経済版NATO」の深化
高市政権が日米共同で推進する南鳥島沖のレアアース開発は、単に資源の調達先を増やすという話に留まらない。これは、経済安全保障を基軸とする日米同盟の新たな深化と、中国を念頭に置いた「経済版NATO」とも言うべき強固なサプライチェーンの再構築を目指す、壮大な戦略の一環である。
日米同盟の新たな柱:経済安保
これまで、日米同盟は主に安全保障(軍事)分野でその連携を深めてきたが、近年、ハイテク技術や重要鉱物を巡る「経済戦争」が激化する中で、経済分野での協調が不可欠となっている。今回のレアアース共同開発は、日米が共通の脆弱性を認識し、共同でレジリエンス(強靭性)を高めるという、極めて象徴的な意味合いを持つ。
高市首相は、先のトランプ大統領との会談で、レアアースだけでなく、半導体やAI、バイオテクノロジーといった先端技術分野での連携拡大も確認している。南鳥島産のレアアースを基点として、日米の研究機関や企業が連携し、採掘・精製・加工といった全工程で技術標準を共有することで、中国標準とは一線を画す「自由主義圏サプライチェーン」の確立を目指す。これは、経済的な側面だけでなく、価値観を共有する国々との連携を強化し、日本の外交的影響力を高める上でも重要な一手となる。
巨大市場の誘引と「高市経済学」の試金石
このプロジェクトの成否は、高市政権が掲げる「成長戦略」の行方を左右する試金石となる。レアアースは、EVや風力発電機といったグリーン・トランスフォーメーション(GX)の推進に欠かせない。日米が安定的にレアアースを供給できれば、日本の自動車産業や電機メーカーは、中国の動向に左右されることなく、安心して新製品開発と生産拡大に投資できる環境が整う。
高市首相は、このプロジェクトを通じて、国内企業の研究開発投資を促し、民間活力を最大限に引き出すことを目指す。具体的には、税制優遇や規制緩和、そして巨額の政府系資金の投入を通じて、採掘・精製技術を持つ企業群や、レアアースを活用する川下産業(高性能磁石、電池メーカーなど)に対し、強力な投資インセンティブを提供する方針だ。
この政策は、高市首相が重視する「戦略的投資」に基づいたものであり、単なるバラマキではない、未来の成長の種に集中的に資本を投下する「高市経済学」の実践と言える。しかし、深海採掘はリスクも大きく、商業化までの道のりには不確実性が伴う。巨額の国費を投じる以上、国民に対してその経済合理性を明確に示し、プロジェクトを確実に成功に導く政治的な手腕が求められる。
オーストラリア、インドも視野に入れた「包囲網」
日米の連携は、レアアース供給網再構築の「核」ではあるが、それだけで完結するものではない。米国は既にオーストラリアともレアアースの供給協力で合意しており、日本もまた、豪州やインドといった「クアッド」の枠組みを念頭に、多国間での重要鉱物連携を模索している。
南鳥島での開発をテコに、日本はこれらの国々との連携を深め、中国への依存度をさらに低下させる「レアアース包囲網」を築く構えだ。これは、資源外交における日本の存在感を高め、アジア太平洋地域における経済秩序の安定に寄与する、戦略的な意義を持つ。日本の経済成長を加速させるには、国内の「国富」開発に留まらず、こうした国際的な連携をいかに巧みに進めるかが鍵となる。
【編集:YOMOTA】
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